紙ひこうき、きみへは令和6年からの国語教科書に掲載されます。
こんなに長いお話が教科書に掲載されるんですね。それも3年生。
調べてみるといくつかの地域の読書感想文の課題図書に選ばれていました。
それだけ、心に訴えるものがこの作品にはあるのでしょう。
そんな期待感をもって読んでみました。
言葉の選び方や構想が繊細だなと感じました。
言葉一つ一つが心に突き刺さり考えさせられます。
また、描写も素敵でした。
そんな紙ひこうき、きみへの伝えたいことや感想、名言などを紹介していきます。
紙ひこうき、きみへのあらすじ
ある朝シマリスのキリリは
朝目覚めて森に吹いている風の音を聞き、
今日は何か特別なことがあると予知しました。
すると、紙ひこうきがどこからか飛んできました。
そこには、
「こんにちは、夕方には、そちらにつきます」
と書かれています。
自分へのメッセージではないと思い
空に紙ひこうきを飛ばすのでした。
しかし、しばらくするとまた窓からさっきの紙ひこうきが入ってきたのです。
そこで、キリリは自分のもとに来たものだと思うのですが
誰からなのか分かりません。
ごちそうを作って待っていると
そこに現れたのはミケリスのミークでした。
二人は意気投合し、仲良くなりました。
しかし、旅を続けているミークは
寂しい気持ちで見送るキリリを後にし、
ふたたび旅に出て、二人は離れ離れになるのでした。
一人残されたキリリは、ミークを思い出しては
忘れられたのではないかと悲しく不安な気持ちを抱くのでした。
一方、
旅をして一人で生きていくのが当たり前だったミークも
キリリのことが気になり…
紙ひこうき、きみへの感想
紙ひこうき、きみへは
子どもももちろんなのですが、
おとなにも心に響くところがたくさんあるなと思います。
ところどころに
心に残る言葉がちりばめられていました。
ミークが旅立った後からの
相手を思う気持ちや
会いたい気持ち、
二人の心の通い合いが
優しくも豊かに表現されていて
話に引き込まれます。
友達の存在って
自分の考えや習慣を変えるほどに
大切な出会いになることがあるのですね。
私は、そんな友達に出会えたかなぁ
そんな存在であったかなぁと思い返してしまいました。
友達に限らず、
その人の考え方も変えてしまうほどのものが人との出会いの中にはあるのですよね。
人との関係について
優しい温かい気持ちになれる本でした。
空を切り取るハサミ、なんて素敵なんだろう!
そんな発想がもてるようになれたらいいのになぁと
絵本を離れて思ったりもしました。
紙ひこうき、きみへの名言
なんでも、おぼえているわけにはいかない。
よくばって、荷物をいれすぎたかばんみたいに、
心がおもたくなっちゃうだろう?
心が重たくなると、からだも思うように動かなくなるからね。
わすれるのは、たいせつなことだよ。
確かに!
気にしなくていいことまで覚えていたり、悩んだりしていると
心が重たくなりますよね。
ただ、この時のリークは、すべて忘れるくらいの勢いでした。
最後に忘れられないものに気付くのですけどね!
忘れることも大切ですが
全部忘れちゃうというのは悲しいですよね。
忘れられないものを大切にしていきたいなと思いました。
だめだよ、ここにいなくちゃ
…(中略)
キリリの心だって、もうここにあるのかどうか、わかりません。
きっと、つめこまれた空が
外へ飛び出そうとしているのでしょう。
いえ、足ではなく、羽が生えているのでしょう。
心に羽が。
この一連の文章
キリリの今の場所で安心して暮らしていたい気持ちと
大切な友達に会いたい、友達と一緒にいたいという気持ちの葛藤と
友達に会いに行くことの気持ちが大きくなっていって、
いよいよ今の環境を飛び出す時がきた!
というのが繊細に表現されていて私は好きです。
この場面は、相手を思うというより、
私、個人としては、自分が仕事をやめようかどうしようかと
悶々と悩んでいた時のことを子の分から思い出してしまいました。
もう、心はそこにはないのに
でも動く勇気もない。
外に出たいと思っているのに…
飛び出したとき、心に羽が生えたように軽くなったことを思い出しました。
ついこのあいだまで、ミークは、ひとりでいても、
ひとりぼっちだとかんじることなどなかったのに。
さびしさを知っているとしても、そのひんやりとした空気も
ペパーミントみたいで気持ちがいいと思えたのに
ミークがキリリの存在を特別と感じ、
ミークの気持ちの変化の気付きが伝わってくる文章ですね。
一つ一つの言葉が大切に選ばれていると思いませんか?
作品全体を通してこんな素敵な言葉がちりばめられていて
側に置いておきたい1冊になりました。
自分に向けてくれる相手の気持ちや思いは
一人でいるということよりも、
自分の気持ちも軽くするし
前に進む気持ちを後押ししてくれるのですね。
紙ひこうき、きみへの出版社や対象年齢、登場人物など
著者 | 作 野中柊 絵 木内達朗 |
出版社 | 偕成社 |
出版年月日 | 2022年6月30日 |
ページ数 | 56ページ |
定価 | 1650円 |
対象年齢 | 小学校中学年から |
登場人物 | キリリ ミーク |
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