すべての小学校の国語教科書に掲載されている一つの花。
それなので、
ほとんどの人がこの話を小学校で学習していると考えられます。
戦争に関連する本の中でも一番知られているのではないでしょうか。
とはいえ、絵本で読んだという人は
あまりいないと思います。
小学校の頃、または、この話を懐かしく思った方は
絵本を手に取ってみてはいかがでしょう。
一つの花は何年生?教科書には、いつから掲載?
一つの花は小学4年生で扱われています。
光村図書出版では、昭和52年度版から掲載されています。
光村図書の国語では
3年生、4年生、6年生で戦争に関係する教材が扱われています。
国語の文学教材で戦争を扱うのには
賛否あると思います。
また、戦争を知らない子どもたち
(だけではなく、教員も)
どこまで、戦争のことを理解できるのか。
私自身、良く分かりません。
ただ、事実として
日本でも戦争が行われた事実と
その悲惨さを忘れないためには必要なのかもしれません。
それを思うと、
戦争というより
平和の有難さを意識することが、大切だとも思えます。
私も、戦争の大変さなどに目が行きがちでしたが
その大変さや苦しさを知った上で
今の平和を大切にし、
今の日々のありがたさに気付くように
授業をしていればよかったなと振り返っています。
一つの花と今西祐行
今西さんの初期の作品ですが
代表作の一つとして知れ渡っています。
一つの花を作者の今西祐行さんが書いたのは、昭和27年です。
その後、昭和31年に童話集「そらのひつじかい」(泰光堂)に収録され
世に出ました。
戦後、焼け野原の後のみすぼらしい家が
たくさんのコスモスやオシロイバナに包まれていることがあったそうです。
軍隊帰りの今西さんにとって、
それは、戦争から生き残ってきた人々を想起させる
生命力を感じさせる景色に映ったのかなと思います。
そんな光景を覚えていて、
この一つの花にコスモスを取り入れたのだと思います。
また、この作品を書いたころ
一人娘さんがいらっしゃったそうで
当時の貧しかった実生活がこの作品に移っていることも否めません
と絵本のあとがきに記されています。
今西祐行さんの見て、感じていたことが
作品に多少なりとも表れていそうですね。
あとがきを読むだけでも、
絵本を手に取って
新たな気付きがありました。
一つの花のあらすじ
食べるものがじゅうぶんにない
戦争が激しかった頃のお話です。
ゆみ子はお腹をすかして
いつももっともっとと言って
食べ物を欲しがりました。
ゆみこのおかあさんは
一つだけ
と言って、自分のぶんから分けてくれました。
一つだけがお母さんの口ぐせになり
ゆみ子も
その口ぐせをおぼえて
「一つだけちょうだい」
がハッキおぼえた最初の言葉となりました。
じゅうぶんに物もなく
一つだけだけしかもらえない
または、もらえないゆみ子を見て
どんな子になるんだろうと
お父さんは思い
物をあげる代わりに
高い高いをするのでした。
ある日、あまりじょうぶでないおとうさんも
戦争にいくことになります。
ゆみ子はお母さんに負ぶわれ
見送りに行くのですが
そこで、おとうさんに持たせたおにぎりを
「一つだけちょうだい」
といいながら、
いつもなら一つだけわたしていたのに
その日は全部たべてしまいました。
ついに、汽車がホームに入ってきた時にも
「一つだけちょうだい」
と言って泣き出してしまいました。
お父さんは
プラットホームの端に咲いていた
コスモスの花を一輪
ゆみ子に渡しました。
笑顔になったゆみ子をみて笑うと
花を見つめながら行ってしまいました。
10年後…
一つの花の伝えたいこと
読んだ人がどう感じるか次第なので
わたしは…ということで読んでくださいね。
命の大切さ
「ひとつだけ」
で、忘れてはいけないものは
命ではないでしょうか。
戦時中はその命もないがしろにされていました。
ごみばこのようなところに
忘れられたようにひっそりとさいていて
一輪のコスモス。
なんだか、そんなコスモスと
当時の人々の命が重なります。
「だいじにするんだよう。」
といって、出征したお父さん。
コスモスを大事にというより
一つの命を大切にと伝えたかったのかなと
思います。
最後たくさんのコスモスに包まれている
のどかな光景は
その一つが安心して咲き乱れている
そんなことを感じさせてくれました。
戦争の悲惨さ
あまり、戦争とは結びつけて考えたくはないですが
あえて考えるなら
やっぱり、この手のお話は
戦争の悲惨さを除いては考えることができないですよね。
体の弱いお父さんまで
戦争に行かなくてはならない。
小さな子が満足するほど食べることができない。
戦いで物事を解決しようとする世の中は
本当にもう、終わってほしいものです。
平和の尊さ
戦争の悲惨さと表裏のものですが
最後の、お母さんとゆみ子の日常は
明るく書かれています。
たとえお父さんがいなくても…
日常の平和を感じ取ることができます。
家族愛
どんな世の中の状況であっても
親は子を思っていますよね。
ゆみ子を思うお母さんやお父さんの
言動があります。
また、最後は
ゆみ子がお母さんを支えているのが伝わります。
困難に負けずにたくましく生きていく
人間の強さのようなものも同時に見ることができますね。
一つの花の感想
色々書きながら
今、思っていることは、
当たり前にある日常を
日々感謝して過ごしたいなということです。
当たり前にある日常は、
つい、忘れがちになり
不満や不平を漏らしてしまいます。
それも受け止めつつ
小さな当たり前のありがたさを
思い出しながら…生活していきたいです。
そして、
すべての人が安心して暮らせるために
個人としてできること…
まだ、できそうなことがありそうです。
一つの花の登場人物や出版社など
一つの花も単行本で出版されているものもあります。
今回は、絵本を紹介します。
著者 | 文・今西祐行 絵・鈴木義治 |
出版社 | ポプラ社 |
出版年月日 | 1975年8月 |
ページ数 | 32ページ |
定価 | 1925円 |
対象年齢 | 3歳・4歳・5歳(ポプラ社のHPより) |
登場人物 | ゆみ子 お父さん お母さん |
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