今回紹介する初雪のふる日は、
光村図書の4年生の国語教科書にも掲載されています。
私が作者の安房直子さんに出会ったのは、
教科書が最初でした。
この初雪のふる日は
ちょっと怖い感じのするお話です。
初めて読んだ時、
初雪のふる日から4年生の子たちは
何を理解するのだろうと思いました。
そんな、怖い感じのする不思議なお話の
あらすじや感想、
伝えたいことやうさちの正体を考察してみたいと思います。
初雪のふる日のあらすじ
秋の終わりの寒い日、
村の一本道に書かれたどこまでも続いている石けりの輪。
女の子は、そこに飛び込み
石けりをしながらどんどん進んでいきます。
そのうち、雪が降り始め
その雪は、だんだん激しくなっていきます。
かえろうとすると後ろから
まっしろなうさぎが列になり
石けりをしながら後を追いかけてきます。
前を見ると、前にもどうように白うさぎが…
どこまで行くか尋ねると
世界のはてまで雪を降らせていくと言います。
その時
おばあさんから聞いた話を思い出しました。
うさぎのむれにまきこまれたら、
もう帰ってこられなくなるというのです。
止まろうとしても、うしろのうさぎがせかします。
動きながらおばあちゃんの話をひっしで思い出そうとします。
一人だけ生きて帰ってきた子の話と
その子がとなえたおまじないを思い出しました。
女の子がおまじないを言おうとしたとき
しろうさぎたちは自分たちの歌を大きな声で歌いました。
女の子はおまじないが唱えられず、
どんどん進んでいってしまうのでした。
おばあちゃんに祈ったとき
一枚のよもぎをみつけ…
それがきっかけとなって、
おまじないを唱えることができた女の子は
無事、うさぎの列から逃れることができました。
逃れた場所は…
ちょっと怖い感じや
どうやってよもぎのおまじないを唱えられたかは
ぜひ、絵本を手に取って読んでみてください。
初雪のふる日の作者安房直子さんとは?
本名:峰岸直子
生年月日:1943年1月5日
死没:1993年2月25日(死因は肺炎)
不思議な世界へ導くファンタジー作品が多いですね。
うさぎを扱っている作品も多いのに気付きます。
ファンタジーであっても
安房直子さんの価値観とか示唆としたいこととか
伝えたいことが含まれているなと思います。
例え、絵本であっても
作家さんのメッセージが隠されている。
それを正確に捉える必要はないと私は思いますが、
(というか本人でないので正確は難しいですよね。)
私は、絵本の中にあるメッセージを想像したり
さぐったりするのも絵本を楽しむ一つではないかと思います。
授業でも読者なりに、絵本のメッセージをさぐることで
友達と読み取ったことを伝え合うのは
おもしろそうですね。
そして、それが読書の習慣につながったり、
読書の楽しみにつながるのではないかと
私は考えています。
初雪のふる日の感想や伝えたかったことの解釈
私が、一度めに読んだ感想は
なんだか怖い。
不思議な話だなと言うものでした。
怖いというのは…
扉の言葉を読んでから
内容を読み始めたので、
北の方からやってきた白うさぎたちに
さらわれてしまった女の子のお話。
と言うのが頭に入っていて
さらわれた!!
が強烈に残っていたからだと今は思います。
読み終えた時は、ほっとしました。
でも
異次元の話ではなくて、
うさぎたちと別れた女の子が
町の人と話したことを考えると
やっぱり、現実に起こっていたことで…。
もし、別れられなかったら
そのまま連れて行かれちゃったんだろうなと思うと
やっぱり恐ろしいですね。
最後、私がホッとしたのは、
その離れたところの町の人たちは
女の子に温かく接してくれ、
元いたところに帰れそうでよかった。
と、思えたからでした。
初雪のふる日 何を伝えたいのかな?
とびながら、女の子は、
それ(こんなに長い石けり、誰が描いたんだろう…)ばかり考えていた。
だんだんうさぎが増えてきた
だんだん列のスピードが上がっていった。
止まれない
そんな初雪のふる日の話に出てきた言葉を
私は人生に重ねてみました。
すると…
一つのことだけを考えたり、見ていたりしていると
その考えや目の前のことだけに引っ張られてしまう。
そして、その一つの見方や考え方がおかしいんじゃないかと
思い始めても
仕事や生活に追われ、
加速している流れに一歩立ち止まって考える余裕がない。
当たりを見回す余裕もない。
ともすると、
日々の流れに乗っていってしまう流されてしまう
ということが自分のこれまでの
人生と重なってしまいました。
夢中で進むのもいいけれど
流れに流されないように
ちょっと立ち止まったり、
周りを見わたしたりして
その状況を俯瞰してみることの大切さを
私には教えてくれている気がします。
この初雪のふる日は、
主人公に名前は付いていないし、
なんだか、人ごとのように物語が淡々と語られていて、
よくある絵本とは違っているなと私は感じています。
あえて、主人公を「女の子」としていることで、
どんなひとにでも言えること
というメッセージ性を感じませんか?
安房直子さんが生きていた時代から考えると
安房直子さんが生まれたのが第二次世界大戦中。
そして、その後、高度成長期とともに
安房直子さんが生きてきたことを考えると…
あの、高度成長期でイケイケ!!と
家庭も顧みず
それが当たり前のように右へならえで働いていた時代では、
身を粉にして働くことについて疑ってなんていませんでしたよね。
このままでいいの??
そんなことを思って警鐘を鳴らすために
安房直子さんが
初雪のふる日を描かれているとしたら…
ご自身の考えをしっかりもち、
世の中を見ていたとしたら…
と考えると
安房さんを見習いたいなと思います。
子どもたちには、
流されないことの大切さとか
立ち止まって周りを見る余裕の大切さを
伝えられるといいのかなと考えました。
あくまでも、私の考えですが…
どんなことを子どもたちは、
この話から受け取るのか聞いてみたくなりました。
うさぎの正体は?
伝えたいことにも書きましたが
うさぎは、時の流れなのかなと思いました。
自分で考えることをやめても
そのまま流れてしまう。
そして、その流れは加速して…
また、同調圧力のようなものを感じさせられました。
そこから、出るのは容易ではない。
ただ、自分の考え方しだいで同調圧力からは出られますね。
初雪のふる日の怖さに引き込まれてしまうのは?を考察
女の子が石けりの輪をたどっていくときの
片足、両足、とんとんとん。
と言う言葉が
絶妙なポイントで何度も使われていて、
その焦る感じや、
スピードが増す勢いを
勝手に自分で想像できてしまって
ドキドキが助長されている気が私にはしました。
さらに、せっかく女の子がおまじないを思い出したのに
それを邪魔するうさぎたちの存在。
こうやって、女の子は戻れなくなっちゃうんじゃないか
この先話はどう続いて行っちゃうのか…
とその場面を想像してどんどん
引き込まれている感じがしました。
そんなリズム感と切羽詰まっている感じが
怖さを助長させているのではないかと私は思いました。
初雪のふる日におけるよもぎについて
あえて、なぜヨモギなのだろうと思って
ヨモギについて調べてみました。
よもぎは、日当たりのよい
原のや道端などに集団を作って生えるそうです。
初雪のふる日を読み進めるうちに、
雪が降る灰色の世界に入りこみ、
その中でヨモギが出てくると
明るい春のイメージが
自然に脳裏に広がってくるのを私は感じました。
ちなみに花言葉は
幸福、平和、平穏、決して離れない など
だそうです。
日常から決して離れない!という意思をもって
現実世界に戻ってくるおまじないの言葉に
ヨモギが必要だったのか…
まさか、そこまで安房直子さんが考えていたかどうかは…
あくまでも私がこの作品に出会って
読んでみて考えたことなのでそのところを
ゆるく受け取ってください。
きっと、色々な解釈があると思います。
初雪のふる日のデータ・対象年齢
著者 | 安房 直子作 こみね ゆら イラスト |
出版社 | 偕成社 |
出版年月日 | 2007年12月1日 |
ページ数 | 30ページ |
定価 | 1540円 |
対象年齢 | 小学校中学年から |
登場人物 | 女の子、白うさぎ |
安房直子の他の作品
きつねの窓(6年生の国語に掲載)については、
こちらで紹介しています。
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